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野生のマカダミアの木を、未来へと繋ぐ

マカダミアナッツの故郷、と聞くとみなさんはどの国を思い浮かべますか?実は原産国はオーストラリアなんです。今みなさんが食べているマカダミアナッツのルーツは全て、オーストラリアの熱帯雨林に自生しているマカダミアナッツの木に辿り着く、ということ。しかし、そのマカダミアの野生種が今、絶滅の危機に瀕しているというのです。「このままでは絶滅は止められない」野生のマカダミアの保全に立ち向かう一人の男性にお話を伺いました。

野生のマカダミアの木を、未来へと繋ぐ

マカダミアナッツの故郷、と聞くとみなさんはどの国を思い浮かべますか?

実は原産国はオーストラリアなんです。今みなさんが食べているマカダミアナッツのルーツは全て、オーストラリアの熱帯雨林に自生しているマカダミアナッツの木に辿り着く、ということ。しかし、そのマカダミアの野生種が今、絶滅の危機に瀕しているというのです。

「このままでは絶滅は止められない」野生のマカダミアの保全に立ち向かう一人の男性にお話を伺いました。

野生種を守ることの重要性

オーストラリア政府は野生のマカダミア全種を脆弱種、及び絶滅危惧種に分類していることをみなさんはご存知でしたでしょうか?

そしてなんとなく大変そうなことは理解できるけれど…なぜ、野生種を守ることがそんなに大切なのでしょう?

遺伝子の多様性

私たちは食べるために食物を作り出さなくてはなりません。しかし昨今の気候変動が作物へ与えるダメージは大きく、今後持続可能な農業をおこなうためには高温や害虫などに耐性を持つ新種の開発へ向けた取り組みが必要不可欠になってくるとか。その新品種の開発に重要なのが多種多様な野生種、なのです。

例えば多くの樹木同様、商業用のマカダミアナッツは接ぎ木によって繁殖していきます。しかし商業用の農園には何千本という木があるものの、個体の特性はほとんどありません。そしてこのように遺伝的な多様性が乏しいと、気候変動により引き起こされる病害虫や気候に植物が負けてしまう危険性が高まっていくのです。簡単にいうと、作り続けることが難しくなってくる、ということ。

一方、原生国であるオーストラリアの野生のマカダミアナッツは、豊かな多様性を誇ります。この野生種が元気であることが、未来のマカダミアナッツにつながる、というわけ。

しかし現在の状況はとても深刻。ヨーロッパ人の入植当時よりオーストラリアの土地は次々と開拓され、さらに近年拡大する住宅開発、火災、農業、雑草の繁茂により、野生のマカダミアはなんと90%も失われた、と言われているのです。

野生のマカダミア

1940年代のブリスベン。

「マカダミアとマンゴーの木を裏庭に植えている家庭がそここに、当たり前にあった時代です」とイアン・マコナチーさんは当時を振り返ります。

「昔は裏庭のマカダミアナッツを割り、フライパンにバターをジューッと熱してマカダミアナッツをローストし、家族みんなで食べていました。マカダミアは生活の一部、その当時を知っているからこそ、今私は情熱と危機感を持って活動することができているのです」

その後、1980年代にマカダミアの新種が発見されたときは、大変な興奮を覚えた、と続けます。

「130年間、私たちは3種のマカダミアしか存在しないと思っていたのですから驚きました」とイアンさんは言います。

「妻のヤンと私は、マカダミアの生息地からさらに300キロ北で新たなマカダミアの種が発見されたことを知らされました。このマカダミア・ジャンセニーという種の名前は、最初にマカダミアを発見した人物の一人であるレイ・ジャンセンの名前にちなんでつけたとか。発見当初は23本でしたが、今では約100本が見つかっていますよ。でもまだまだ十分とはいえず、とても希少で、この種も絶滅の危機に瀕しています」。

60年にわたり野生のマカダミアの保護活動を牽引してきたイアンさんは「野生の樹木の遺伝子がどれほど重要で、どれほど多様であるか、私たちはもっと自分ごととして知るべきです。将来、野生の遺伝資源から生産性や適応性が大幅に改善される可能性は十分にあります」と力強く訴えます。

保全活動へ向けて

2007年にオーストラリア政府に認定された「マカダミア・コンサベーション・トラスト」は、野生のマカダミア保護に熱心な愛好家グループによって設立された環境保護団体です。

「まず団体を立ち上げるために私たちが作成したのはマカダミアの保全計画でした。野生のマカダミアがどの地域に生息しているのか、どのようなリスクに直面しているのか、を徹底的に調査し、レポートにまとめました。それが政府によって採用されたことが設立へとつながったのです」と保護活動の要となる基盤を作りあげた経緯を話します。

「私たちのキャッチフレーズのひとつに、”絶滅とは、永遠に失うということ “というものがあります。つまり、DNAや遺伝子を保存しない限り、失われた野生のマカダミアの木は、すべて永遠に失われ二度と手に入ることはないのです」。

イアンさんは現在、マカダミアの歴史に関する本を執筆中だとか。

「本のタイトルは「『マカダミア・ストーリー』です。3,000万年前にマカダミアがどのように進化したか、アボリジニの人々がマカダミアをどのように大切にしていたのか。初期の植物学者について、マカダミアに情熱を注いだ開拓者たちについて、そして現代のマカダミア産業が1960年代の年間30トンから現在では5万トンにまで成長したことについて、とにかくマカダミアナッツの歴史を丸々一冊にまとめたかった」と話します。

さらにイアンさんとイアンさんの奥様のヤンさんは、野生のマカダミアの保護に向け新たな取り組みも行なっていく、と教えてくれました。

美しい熱帯雨林の中を歩きながら、自然の環境の中で育つ野生のマカダミアを見ることができるトレイル「Walk with Wild Macadamias」が間もなくスタート。その自然美を前に、きっと参加した方は何か感じ取ることができるのでは、とこちらにも期待が寄せられています。

野生種を守ることは、食を守ることに直結します。

「他人事では済まされない、絶滅をなんとしてでも食い止めなければ」

そんなイアンさんの懸命な発信が、多くの方に届きますように。

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