マカダミアナッツを育ててみたい!
日本での栽培方法と育て方ガイド
マカダミアナッツを手にとって眺めながら、これを土に埋めたら芽が出てきて、マカダミアの木が育ち、自宅でおいしいマカダミアナッツが食べ放題になるのかも……!?なんて夢見たことのある方もいるのでは。オーストラリア原産で、亜熱帯地域で育つマカダミアの木。日本でも個人の家で栽培することははたして可能なのでしょうか。
マカダミアナッツは日本で育てられるの?
マカダミアナッツを自宅で個人的に育てることはできるのか?いつも食べているマカダミアナッツをそのまま土に埋めれば芽が出てくるのでしょうか?
残念ながら、食べかけの袋から取り出したマカダミアナッツをポンと庭の土に埋めたものがすくすく育って大木になり、ナッツが好きなだけ食べられるようになることはないようです。
殻付きのマカダミアナッツでも、食用として売られているものは乾燥させてあるため、そのまま育てることはできません。育てるためには、発芽目的で販売されている種を入手する必要があります。
栽培には亜熱帯性気候が適していますが、-5°Cくらいまで耐寒性がある種もあります。沖縄や和歌山県南部などでは、試験栽培が行われたのちに散在し、外で育っているマカダミアの木も存在します。商業用としてではないものの、収穫事例もあります。
また、数は多くないものの全国各地の植物園でマカダミアの樹には出会えます。東京都「夢の島熱帯植物館」、栃木市「とちぎ花センター」、富山市「富山県中央植物園」、大阪市「咲くやこの花館」などで、マカダミアの美しく、香り豊かな花や鮮やかな緑色の実がなる様子まで見られます(2017年9月現在:また、植物園の樹によっては実をつけない年もあります)。
種から育てるより、質と状態の良い苗木が手に入ればその方が鑑賞できるようになるまでの時間がかかりません。
いずれも、国内では、ガーデニング専門店、ネットショップなどで入手可能です。
マカダミアナッツの基本情報
マカダミアナッツはヤマモガシ科マカダミア属で、原産地はオーストラリア北東部の熱帯雨林。現在は亜熱帯気候が特徴的なオーストラリアのニューサウスウェールズ北部、そしてクイーンズランド南東部のマカダミア農園で多く栽培されています。オーストラリア以外ではアメリカ、南アフリカなどでも栽培されています。食用にしているのはマカダミアナッツの種で、世界一硬いといわれている茶色い殻で覆われています。
マカダミアナッツの基本情報
分類 | ヤマモガシ科マカダミア属 |
原産地 | オーストラリア |
主な品種 | インテグリフォリア種:Keaau(キアウ)、Kau(カウー)、Keauhou(ケアホウ) テトラフィラ種:Baroochy(マルーチー) ハイブリッド種:Beaumont(バーモント)、Nelmac II(ネルマックII)、Renown(レノウン)など |
マカダミアの種類・品種
M. Integrifolia(インテグリフォリア種):主にニューサウスウェールズ州北部、クイーンズランド州のバッファル山とギンピー間で生育。25m程まで成長し、葉は3枚で淵が滑らか。花はクリーム色で、殻も表面が滑らかです。
M. Tetraphylla(テトラフィラ種):4枚の葉が輪生する系統。比較的気温の低いタスマニア地方でも育成可能。冷える地域では、生産性が高くなるまでに時間がかかります。20mほどに成長します。
その他、M. Ternifoloa、M. Janseniiなど10種以上があります。
日本では、インテグリフォリアとテトラフィラ、または双方を掛け合わせた、ハワイ産の「バーモント」や「クーパー」種の種や苗木が販売されています。品種によって、適した温度や耐寒性が異なるので、品種選びも重要です。バーモントは、成長が早く、他の品種と比べると実がなるまでに4年、花が咲いてから収穫までの栽培期間も短く、耐寒性もあることから、日本では比較的育てやすいようです。
マカダミアナッツの育て方
用土
湿度の高い、深く、水はけのよい土壌でよく育ちますが、過湿にならないように気をつけます。30cm〜1mの質のよい土壌を好み、pHは5.5前後の酸性、肥沃な土が望ましいです。観葉植物の土や、ブレンドする場合は山土2:パーライト1:パーク堆肥1などを用います。
苗の選び方
- 元気で濃い緑の葉をつけ、質のよい、状態のよい木を選びましょう。
- 害虫や病気にかかっていない木を選び、成長不良の木は避けましょう。
- 根がしっかりとし、元気な木で、細かい根が幅広く分かれているもの。根がねじ曲がっていたり、くるくる回ったりしていない木を選びましょう。
- 水はけ状態がよく、水がたまったり、堅い土の塊がない、鉢に入ったものを選びましょう。
植え付け
日本では遅霜の心配がなくなってからの4月以後が適期です。根が浅いため、風で倒れないよう支柱に固定するなど、防風対策が必要です。若木は霜や寒さに弱いので、必要であれば霜よけをおこないます。オーストラリアで栽培する場合では、肥料と水やりをかかさず、害虫や病気にも注意して上手に育てると、定植してから3〜5年で花が咲くようです。
水やり
過湿・乾燥条件に耐性がありますが、定植後は水を多く必要とするので、かん水はしっかりと行ないましょう。特に、結実〜果実肥大時は土壌の乾燥で果実への水供給を停止し、生理落果してしまうのでかん水は必須です。
追肥
気温・地温が低下する10月までに施肥を終えます。
日当たり・置き場所
13〜25℃でよく成長します。、関東以南では、露地栽培、または60リットルポットでも栽培できるとのこと。外で育てる際は、霜や強風の害がないことも重要です。しかし、日本では冬の寒さの間成長しにくいこともあり、あまり高くは育たないようです。
剪定
剪定は冬の終わりに行います。直立性なので、大きくしたくない場合には早めに主枝を切り返し、横方向に枝を伸ばします。
増やし方・植え替え
接ぎ木・取り木で増やします。50cmほどの高さに育ち、親指大の太さになったらこれを台木として、同じ種類の接ぎ木をし、うまく活着したら、地植えかさらに大きなポットに定植しましょう。
病害虫
炭そ病、灰色かび病、うどんこ病、カメムシ、ボクトウガなど
マカダミアナッツの開花から収穫まで
日本の気候で、マカダミアナッツなどの亜熱帯植物を、花をつけて実がなるまで大きく育てるのは、生育環境が違いすぎるので、初心者にはかなり難易度が高いのです。
しかし、和歌山県の事例では4〜5月頃に開花して、9〜10月頃にマカダミアナッツを収穫できているようです。
ポイントは、開花させてからは乾燥ストレスを与えないようにし、受粉時にはミツバチなどの助けもあるとなお可だとか。ちなみに40~50の花から、最終的にナッツの実として成熟するのは4~15個です。
とにかく実がなるまでに時間がかかるため、根気よく向き合ってあげることが重要なようです。
また、オーストラリアでは緑色の外皮にはいったまま落下したものを収穫しますが、日本で手に入りやすい「バーモント」種などは、自然には落ちないので木に登って収穫する必要があります。
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『庭先でつくる トロピカルフルーツ』/農山漁村文化協会
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ルーラル電子図書館
http://lib.ruralnet.or.jp/cgi-bin/ruralsrch.php?LIB=0&C01=%93%C1%8EY%89…
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著者の米本仁巳さんは、熱帯果樹栽培研究の第一人者。農学博士、熱帯果樹栽培コンサルタントで、日本熱帯果樹協会(http://www.jtfa.info)の代表理事。『アボカド』『マンゴー』『熱帯果樹の栽培』他、熱帯果樹に関する著書を多数出版されています。
【まとめ】マカダミアは観葉植物としても魅力的!
美味しいマカダミアナッツを収穫するまで育てるのはとっても大変な手間と期間がかかること。普段口にしているプレミアムな価値がうなずけるような気がしませんか?
でも種を埋めて発芽させ、育てること、ツヤツヤとした美しい緑の葉を室内の観葉植物として楽しむことなら、専門家でなくても可能そうです。是非挑戦してみてくださいね。
参考文献・サイト:
『熱帯果樹の栽培―完熟果をつくる・楽しむ28種』/農山漁村文化協会
『庭先でつくる トロピカルフルーツ』/農山漁村文化協会
http://rfcarchives.org.au/Next/Fruits/Nuts/MacCultivars5-92.htm
http://www.wildmacadamias.org.au/the-four-macadamias
https://www.crfg.org/pubs/ff/macadamia.html